本職は和紅茶?!知れば知るほど面白い、べにふうきの世界

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「べにふうき」と聞いて、皆様はどんなワードが思い浮かびますか?


おそらく、イメージされる方が最も多いのは、「花粉症に効くお茶」ではないかと思います。


「べにふうき」に多く含まれる「メチル化カテキン」が花粉症に効果があると注目され始めたのは、なんと1980年代のこと。
そこから研究が進み、2000年代に「花粉症にはべにふうき緑茶がいい」と世間に広まると、花粉症対策のお茶として一気に普及していきました。


ですが、この「べにふうき」という品種のお茶…
別に「花粉症対策に開発された茶葉」でもなければ、何なら「緑茶用の茶葉」でもなかったってご存じですか?


もしかしたら、冒頭のイメージの段階で、
“べに=紅?紅茶の紅?”
と思った方もいらっしゃったのではないでしょうか。


そう、実は「べにふうき」は紅茶用に開発されたれっきとした「紅茶用品種」の茶葉なんです!


紅茶用であったはずの「べにふうき」がなぜ、緑茶としてメジャーになったのか。
「べにふうき」は紅茶と緑茶では、何がどう違うのか。
そもそも「べにふうき」とは何なのか。


今回は、そんな奥深い「べにふうき」の魅力と、SuQ Chaで取り扱っている各茶園さんの「べにふうき」について、詳しくご紹介していきます!

~べにふうきってどんなお茶?~

「べにふうき」は、1965年生まれ。
当時の日本は、海外に通じる国産紅茶の開発に励んでいた時代。
そんな中、日本で初めて“紅茶用品種”として登録されたアッサム由来の「べにほまれ(種子親)」と、ダージリン由来の「枕Cd86(花粉親)」の交配で誕生したのが、紅茶用品種の茶葉「べにふうき」です。

しかし、1971年の紅茶の輸入自由化により紅茶の需要が高まらず、寒冷地では育ちにくい性質でもあったため、暖かい気候の鹿児島県や静岡県の一部で生産されるにとどまり、「幻のお茶」として長年ひっそりと栽培されてきました。

品種として登録されたのは1993年、漢字では「紅富貴」と書きます。
香りがふくよかで渋味が強い、紅茶用品種らしい特徴を持ったこの茶葉は、紅茶品種の“紅”に、豊かで位の高い“富貴”が合わさった、優雅で気品がある様を表した名が付きました。

さて、そんな「べにふうき」にスポットライトが当たったのは2005年頃。
農研機構の研究により、花粉症の原因になるヒスタミンを抑える成分である「メチル化カテキン」という成分が最も多く含まれているのが、「べにふうき緑茶」だとわかったことがきっかけです。

メチル化カテキンが花粉症に効果的であるという研究そのものは、1980年代にはスタートしていました。
しかし、カテキンの中でも特殊なメチル化カテキンを含む品種の茶葉がなかなか見つかりません。
実際、緑茶のシェアが最も大きい「やぶきた」にはメチル化カテキンは含まれておらず、実用化に向けてはまずメチル化カテキンを多く含む品種の発見が必須でした。

数百に及ぶ品種の茶葉を煮出して成分を研究した末に、メチル化カテキンの含有量が多いのが紅茶品種である「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」であること、その中でも特に「べにふうき緑茶」にメチル化カテキンが多く含まれていることがわかりました。
その後べにふうきの栽培が鹿児島県を中心に拡大、2015年の「機能性表示食品制度」にアレルギーを抑制する効果の表示が可能になったことで、「べにふうき緑茶」はアレルギーに効くお茶としてシェアを広げていきました。

さて、「べにふうき」はもともと紅茶に適した茶葉として開発された品種です。

紅茶用品種ならば、紅茶で飲めばいいのでは?と思う方もいるでしょう。
しかし、残念ながらメチル化カテキンは茶葉を紅茶に加工すると、発酵の際に発生する酸化酵素の働きで消えてしまうことがわかっています。

つまり、紅茶ではなく緑茶で飲まないと花粉症対策に有効な効果が得られないわけです。

また、メチル化カテキンを多く含むのは成熟葉のみ(茎には含まれない)、高温や長い時間の火入れにも弱い(緑茶や包種茶への加工が良い)、高温長時間の抽出の方が抽出量は多い(火にかけて煮出すのが良い)など、効果的な摂取をするには様々な条件がありました。

紅茶用品種である「べにふうき」は、その性質から緑茶にすると独特の渋味や苦みが強く、同じ緑茶でも薄黄緑で甘みのある「やぶきた」などの緑茶用品種とは、味の系統がかなり異なります。
濃く出しすぎてしまった緑茶よりもパンチの効いた味、といったところでしょうか。

それもあってか、「べにふうき緑茶」を飲んだことのある方が初めて「べにふうき紅茶」を飲むと、紅茶らしい深みのある味わいとまろやかな味に驚かれることが多いです。

和紅茶の代表を担う茶葉でありながら、緑茶の効果に期待が高まる…
本来求められた在り方と、世間に求められた姿とが違っている…
一面が目立ってしまって、本来の姿のギャップに驚かれる…
まるで、“誰かの人生”を見ているようですね。


近年和紅茶への関心が高まり、各産地での「べにふうき紅茶」の栽培も広がりを見せています。
SuQ Chaでも、現在5つの茶園さんの「べにふうき」を扱っていますが、同じ品種の和紅茶でも手掛ける茶園さんの栽培方法や収穫時期、製法などによって特徴ががらりと変わり、思わず「同じ品種のお茶?」と思ってしまうほど。


それぞれの個性の光る魅力的な「べにふうき」。
この機会に、ぜひ飲み比べてみてはいかがでしょう?


べにふうきの画像

~SuQ Chaのべにふうき&おすすめペアリング~

SuQ Chaでご紹介している「べにふうき」は、それぞれ味や水色など個性が際立っていて特徴的。
それぞれの茶葉の「Tea Chart」とともに、SuQ Chaスタッフおすすめの飲み方・ペアリングフードをご紹介していきます。


『牧之原山本園』(静岡県)
春摘みべにふうき(ティーバッグバージョン)

『牧之原山本園』さん 春摘みべにふうき(ティーバッグバージョン)画像
『牧之原山本園』さん 春摘みべにふうき(ティーバッグバージョン)TEA Chart画像

水色: 朱みのあるオレンジ色
香り: 蓮華のようなグリーンフローラルを連想させる香り×微かな甘さ×穏やかな苦み
味わい: さっぱりとして渋みがなく、マイルドな飲み口

牧之原台地の柔らかな陽の光をふんだんに浴びた、優しい甘みと花香を感じられる和紅茶です。
すっきりと飲みたい方はストレートで。ミルクティーにも向いています。

おすすめのペアリングは、あんこがたっぷりの「ぼたもち」。
春摘みべにふうきの優しくすっきりとした味が、つぶあんのコクのある甘さと程よく混ざり合い、午後のティータイムにぴったりです。

牧之原山本園さん
「春摘みべにふうき」
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べにふうき花香

『牧之原山本園』さん べにふうき花香画像
『牧之原山本園』さん べにふうき花香画像 TEA Chart画像

水色: 透き通った黄橙色
香り: 藁を感じさせる香ばしい甘い香り
味わい: ほうじ茶のような香ばしさ×三温糖のようなコクのある甘み

花のような香りと風味が際立つ、飲みごたえがある個性的な味わいの和紅茶。
ストレート、ミルクはもちろん、濃く煮出して炭酸と合わせても◎。
花香の余韻をぜひ楽しんで。

おすすめのペアリングは、山梨の銘菓「桔梗信玄餅」。
もちもちの食感ときな粉の香ばしさ、黒蜜の強い甘さは「べにふうき花香」の強い個性にマッチします。ついつい二袋目に手が伸びる組合わせです。

牧之原山本園さん
「べにふうき花香」
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Limited 5-Tプレミアム(30g入り)

牧之原山本園さん 「Limited 5-Tプレミアム」画像
牧之原山本園さん 「Limited 5-Tプレミアム」TEA Chart画像

水色: 深みのある琥珀色
香り: オレンジのような柑橘の香り
味わい:しっかりとした渋み×緑を彷彿とさせる爽やかな飲み心地

16時間の静置萎凋でできあがった、柔らかく品のある甘みと深みのある味わいは、柑橘のような香りが特徴の和紅茶。
朝の目覚めの一杯として、ストレートで飲むのがおすすめです。

茶葉自体が強いので単品で十分楽しめますが、ペアリングするならばクロックマダムがおすすめ。
半熟の目玉焼きとハム、チーズが組み合わさった朝の贅沢メニューに、贅沢な味わいのLimited 5-Tプレミアムを合わせると、まるでホテルのモーニングにいるような気分が味わえます。

牧之原山本園さん
「Limited 5-Tプレミアム」
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『西製茶所』(島根県)
べにふうき

西製茶所さん『べにふうき』画像
西製茶所さん『べにふうき』TEA Chart画像

水色: 澄んだ紅色
香り: ハチミツのような甘さ
味わい:柔らかな甘み×ほのかな香ばしさ×深いコクの余韻

紅茶らしい味わいが欲しいという方におすすめ。
はちみつ、特にアカシア蜜との相性が良く、程よい渋みとコクのあるアカシア蜜の甘味がマッチして飲みごたえが生まれます。

ほのかな香ばしさのあるこの茶葉は、グラタンやクリームシチューなどホワイトソース系の食事にも合います。
香ばしくも柔らかな味わいが、少し口当たりが重い食べ物の後味を程よく和らげてくれて食が進みます。

西製茶所さん
「べにふうき」
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『ねじめ茶寮』(鹿児島県)
べにふうき

ねじめ茶寮さん 「べにふうき」画像
ねじめ茶寮さん 「べにふうき」TEA Chart画像

水色: 夕日を溶かしたような明るいオレンジ色
香り: 若草のような新緑の爽やかな香り
味わい:クセがなく、栗のような甘みとすっきりとした飲み心地

フルーツジャムと合わせたロシアンティーにすると、茶葉とジャムの甘みがうまく引き立て合って面白い味わいに。

おすすめのペアリングは、独特の食感がくせになる九州のお菓子「黒棒」。
口に広がる黒糖の強い甘さが、すっきりとした「べにふうき」の飲み心地にマッチします。ついつい手が止まらなくなる絶妙な美味しさです。

ねじめ茶寮さん
「べにふうき」
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『和香園/堀口製茶』(鹿児島県)
べにふうき

和香園/堀口製茶さん「べにふうき」画像
和香園/堀口製茶さん「べにふうき」TEA Chart画像

水色: オレンジがかった褐色
香り: スッキリとした花香
味わい:フルーティーな優しい甘さ×柔らかな渋み

くせのない甘さがちょうどよく、飲みやすい和紅茶です。
ホットのストレートティーで、ウンカ発酵特有のフレーバーを堪能するのがおすすめです。

おすすめのペアリングは、ベリーたっぷりのフルーツタルト。
べにふうきの優しい甘さとスッキリと抜ける香りが、口いっぱいに広がるベリーの甘酸っぱさとマッチします。

和香園/堀口製茶さん
「べにふうき」
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SuQ Chaでは『和香園/堀口製茶』さんのべにふうきで作られた「ウーロン紅茶」も販売しています。

ウーロン紅茶

和香園/堀口製茶さん「ウーロン紅茶」画像
和香園/堀口製茶さん「ウーロン紅茶」TEA Chart画像

水色: メープルシロップのような琥珀色
香り: 紅茶のフローラルな華やかな香り
味わい:烏龍茶の香ばしさとほのかな甘さのあるコク深い味わい

烏龍茶と紅茶の違いは「発酵度合いの差」。100%発酵させると“紅茶(発酵茶)”、10~50%の発酵で“烏龍茶(半発酵茶)”に分類されますが、こちらはその中間の約75%の発酵でつくられた茶葉。
烏龍茶と紅茶のどちらの特徴も兼ね備えた『和香園/堀口製茶』さんオリジナルの「ウーロン紅茶」の味わいは、どのお茶とも違う絶対的な存在感があります。

アイスティーで飲むのがおすすめですが、抽出温度や時間を調整したり、果汁や果皮、ミルクを加えるなどアレンジの仕方も豊富です。
独特の味わいが、鴛鴦茶にも向いています。

おすすめのペアリングは、どっしりとした甘さの胡麻月餅。
ごまあんの独特な穀物の甘みとねっとりとした食感に、キレのある味わいが爽快な「ウーロン紅茶」はぴったり。
焼肉などこってり系の食事のときにも欲しくなる、順応度の高いお茶です。

和香園/堀口製茶さん
「ウーロン紅茶」
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『お茶の千代乃園』(福岡県)
べにふうき(春摘み)

お茶の千代乃園さん画像
お茶の千代乃園さん「べにふうき(春摘み)」TEA Chart画像

水色: やや赤みがかったオレンジ色
香り: 甘く優しい果実のような香り
味わい:渋みが少なく、茶葉の甘みがしっかり感じられる味わい

茶葉の甘みと果実のような香りとのバランスが良く、和紅茶が初めての方におすすめ。

ホットはもちろん、水出し紅茶にも向いています。
特におすすめの飲み方はミルクティー。豆乳にしても美味しいです。

おすすめのペアリングは、オランジェット。
柑橘の爽やかさと苦味、チョコレートのビターな甘味が絶妙なバランスを織りなすオランジェットには、包容力のかたまりのようなこの和紅茶がとてもよく合います。

お茶の千代乃園さん
「べにふうき(春摘み)」
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~おすすめアレンジレシピ~

「べにふうき」のおすすめアレンジは、先日ご紹介したレシピ、【和紅茶の黒糖ミルクティー】。
温暖な気候で育つ「べにふうき」と、黒糖のすこしくせのある甘さがよく合います。

【和紅茶の黒糖ミルクティー】
~材料~※1人分
和紅茶 べにふうき:3g
お湯:150ml
牛乳:110ml
黒糖:3g(粉末)

生クリーム:50ml(お好みで)
黒糖:1g
お好みでべにふうき(春摘み)の茶葉を粉末状にしたもの 一つまみ

作り方
  1. 生クリームを泡立てる。ツノが立つ固さになったら黒糖1gを混ぜる。
  2. ティーカップの中に黒糖3gを入れる。
  3. 98度のお湯を茶葉に注ぎ3分間蒸らす。
  4. 02.に和紅茶を注ぎ、注ぎ終わったら牛乳を静かに注ぐ。
  5. 生クリームを乗せて、仕上げに粉末にした茶葉をトッピングして完成!

和紅茶の黒糖ミルクティー画像

~まとめ~

「べにふうき」の意外な来歴や各茶園さんの「べにふうき」について色々とご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

近年「べにふうき」の魅力は海外に発信され、国内の茶園さんが出品した「べにふうき」が、海外のお茶に関するコンペティションにて高い評価を受けています。
紆余曲折を経て、元来の目標であった海外進出も成し遂げた「べにふうき」。
各茶園さんの並々ならぬ努力により日々輝きを増す、まさに“和紅茶界の不動のセンター”的な存在ですね。

「べにふうき」に共通するのは、柔らかな渋みとスッキリとした甘さ。
日本茶のようなストレートな飲み方にも、海外紅茶のようにミルクや甘味を足した飲み方にも対応できる、どんな変化やアレンジも受け入れる懐の深さこそが、「べにふうき」の最大の魅力のように思います。

茶葉ごとの違いを飲み比べて、それぞれの個性に合った自分にとってのベストアレンジを追求していくのも楽しいですね。

皆様も「べにふうき」の美味しい飲み方、おすすめのペアリングがありましたら、ぜひ教えてください!

 
まとめ画像

参考サイト:
農研機構 幻のお茶といわれた「べにふうき」
https://www.naro.go.jp
食の安全分析センター「メチル化カテキンって何?」
https://cfsa.or.jp
テクノロジストマガジン「新進気鋭の研究者Vol.5」
https://technologist.high-five.careers/